起立性調節障害の症状は疾患の一症状としても現れる事は多いです。
そのため病院でしっかりと血液検査や画像検査など必要な検査を行い隠れた疾患がないかを確認する必要があります。
もやもや病やQT延長症候群などの命に関わる病気が隠れている場合もあるので検査は必要です。
他の疾患が除外され起立性調節障害の疑いだけが残った場合は、「新起立試験」を行い血圧回復にかかる時間や起立前後の血圧、脈拍などを測ります。
起立性調節障害(OD)の分類
起立性調節障害は現在、以下のタイプが確認されています。
起立直後性低血圧
立ち上がった直後の血圧低下状態からの回復に時間がかかるタイプです。
起立性調節障害の中で一番多いタイプがこの起立直後性低血圧(INOH:instantaneous orthostatic hypotension)読み方はアイノーです。起立後開腹時間≧25秒、また≧20秒かつ平均血圧低下≧60%。
起立直後に一過性の強い血圧低下があり、目の前が真っ暗になるなどの強い立ちくらみと倦怠感が伴う場合があります。小児では代償的に頻脈も伴うことが多いです。
特に立位で悪化する倦怠感(疲労感)、立ちくらみ、食欲不振、朝が起きにくいなどが症状として見られやすいようです。
血圧の回復時間が25秒以上であれば、起立直後性低血圧と診断されます。
自律神経の乱れ(末梢血管交感神経活動の低下)により細動脈の収縮に問題があると考えられています。
また静脈系へ血液が溜まることもみられ、静脈還流が低下することで、拡張期圧も上昇し脈圧が低下します。
症状の強さにより軽症型と重症型があり起立時の血圧低下が強く、収縮期血圧が15%以上低下したままであれば、重症型と診断されます。
起立時のノルアドレナリン分泌は低下し重症型では強く支障がでます。
体位性頻脈症候群
血圧の回復に異常は見られないが、立ち上がった後の心拍の回復がなく上昇したままのタイプです。
起立性調節障害の中で二番目に多いタイプがこの体位性頻脈症候群(POTS:postural tachycardia syndrome)読み方はポッツです。起立3分以後心拍数≧115/分または心拍数増加≧30/分。
体位性頻脈症候群は立ち上がった時の血圧低下はなく、立ち上がった時に頻脈、ふらつきなどの症状があります。
立ちくらみ症状に加えて、全身疲労感、睡眠障害、片頭痛のような頭痛などの様々な自律神経症状が伴います。
特に頭痛と倦怠感を示すことが多いようです。
起立試験またはhead-up tilt試験で著明な起立性頻脈がみられます。
立っているときのの心拍数が115以上、もしくは起立時の平均心拍増加が35以上なら体位性頻脈症候群と診断されます。
女子中高校生に好発しています。
立っているときのお腹や足へ血液が溜まる事に対して、交感神経が過剰に興奮したりアドレナリン、エピネフリンの過剰分泌することによって起こると考えられています。
体位性頻脈症候群(POTS)の用語自体は米国のSchondorf & Low(1992)によって提唱されました。
この名前での論文が多くなっていますが実質は1950年代から提唱されている起立性調節障害(OD)のひとつと考えられています。
血管迷走性失神
起立中に突然、立って いられなくなり、気を失いそうになったり実際に失神してしまいます。
顔面蒼白、冷汗などの前兆を伴うこともあります。
血管迷走性失神(VVS:vasovagal syncope)は神経性調節性失神(NMS:neurally-mediated syncope)のひとつです。
起立中に収縮期、拡張期血圧が低下するため症状が出現すると考えられています。
起立中に過剰に頻脈が起こる事と静脈還流の低下によって心臓が空打ち状態になり、その刺激で反射的に起こると考えられているため
起立直後性低血圧(INOH)や体位性頻脈症候群(POTS)でも起こります。
遷延性起立性低血圧
遷延性起立性低血圧( delayed orthostatic hypotension) は立ち続けることでだんだん血圧が低下して失神することもあるタイプです。
立ち上がった直後の血圧は正常ですが、数分経ってからに血圧が徐々に下降しだし収縮期血圧が15%以上、もしくは20mmHg以上低下します。
頻度は余り多くありません。
静脈系の収縮不全と考えられており拡張期血圧は上昇し脈圧の小さくなります。
立っているときの静脈還流が下がり心拍出量が減った事に対して、末梢血管をコントロールしている交感神経の働きがうまくいかない為と考えられています。
起立性脳循環不全型
起立性脳循環不全型は脳血流低下型です。
立っているときの血圧や心拍変動は正常ですが、脳血流が低下し、起立性調節障害の症状が出現します。
脳循環を測定する近赤外線分光計(near-infraned spectrocopy;NIRS)などを使用して診断するため一部の医療機関でしか診断できません。
診断基準は国際学術誌に発表されています。
高反応型
立ち上がった直後に一過性の血圧上昇を起こし、起立性調節障害の症状が出現します。
一心拍ごとに血圧を測定できる非侵襲的連続血圧測定装置(Finometer)などを使用して診断するため、一部の医療機関でしか診断できません。
起立性高血圧型
起立後に寝ているときよりもかなり高い血圧になるタイプです
起立性調節障害のまとめ
主に起立直後性低血圧(起立直後に血圧低下し回復に時間がかかるタイプ)
体位性頻脈症候群(血圧回復に異常なく、起立後心拍が上昇したままのタイプ)
神経調節性失神(起立中に急激な血圧低下が起こり失神するタイプ)
遷延性起立性低血圧(立ち続ける事で血圧がだんだん低下し失神するタイプ)
基本的にはこの4つが代表的でとくに起立直後性低血圧、体位性頻脈症候群が多いです。
»起立性調節障害は大人もなる
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